相続とは?
亡くなった人の財産が他の人に引き継がれることを「相続」といいます
「相続」は遺言書の有無の確認から始まります
- ①遺言書がない場合:法定相続
- 法律で定める相続人(法定相続人)が法律の定めにより相続し、相続人全員による「遺産分割協議書」を作成し財産を引き継ぎます
日本の「法の適用に関する通則法」は、『相続は被相続人の本国法による(36条)』と定めており、また、韓国法上も『相続は死亡当時の被相続人の本国法による(韓国国際私法49条1項)』と規定していることから、韓国人を被相続人とする相続問題は、日本の裁判所においても、韓国民法が適用されることになります - ②遺言書がある場合:遺言による相続
- 遺言で指定された人が遺言で指定された財産を引き継ぎます
韓国の国際私法は、死亡時まで日本に常居所がある在日韓国人が『私の相続は日本法による』と遺言書で指定した場合は、日本法を適用することが可能と定めています(韓国国際私法49条2項)
適用される法律は?
■相続における在日コリアン(在留資格:特別永住者)の準拠法
外国籍を有する方を被相続人とする相続については、法の適用に関する通則法36条の規定により、「被相続人の本国法」=国籍のある国の法律が準拠法となります
特別永住者の場合、国籍・地域欄の表示が「韓国」の方と「朝鮮」の方がいますが、適用される法律はどうなるのでしょうか?
- ★「朝鮮」 表示
- 朝鮮民主主義人民共和国対外民事関係法第45条の規定『不動産相続には、相続財産の所在する国の法を適用し、動産相続は被相続人の本国法を適用する 但し、外国に住所を有する共和国公民の動産相続には被相続人が住所を有していた国の法を適用する』の定めにより、被相続人が日本に住所を有し、かつその財産も日本にある場合には日本民法が適用されます
- ★「韓国」 表示
- 韓国国際私法第49条1項の規定『相続は死亡当時の被相続人の本国法による』の定めにより、韓国民法が準拠法となります 但し、不動産については所在地法と規定しており(同法第49条2項)日本にある不動産については日本の民法が適用されます
韓国 | 日本 | |
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法定相続人 | 配偶者は常に相続人 第1順位:配偶者と直系卑属 第2順位:配偶者と直系尊属 第3順位:兄弟姉妹 第4順位:4親等内の傍系血族 (おじ、おば、甥姪、いとこ等) ※配偶者がいれば、第3順位以降は相続人にならない |
配偶者は常に相続人 第1順位:配偶者と子 第2順位:配偶者と直系尊属 第3順位:配偶者と兄弟姉妹 |
法定相続分 | ※配偶者は他の相続人の1.5倍 ①子 2/5 配偶者 3/5 ②直系尊属 2/5 配偶者 3/5 ③兄弟姉妹(人数で均分) ④4親等内の傍系血族(人数で均分) |
①子1/2 ・ 配偶者1/2 ②直系尊属1/3 ・ 配偶者 2/3 ③兄弟姉妹 1/4 ・ 配偶者 3/4 |
配偶者の代襲相続 | 相続人が既に死亡した場合、又は相続欠格となった場合は、その配偶者が子と共同で代襲相続する | 配偶者は代襲相続できない |
相続放棄 | 相続開始を知った日から3ヶ月以内に申述する。経過後は限定承認申請のみ可能。 子が全員放棄後は孫が相続人となる |
相続開始を知った日から3ヶ月以内に申述する。相当な理由があるときは救済有。 子が全員放棄しても孫は相続人にならない |
遺留分 | 被相続人の兄弟姉妹にも認められる (法定相続分の1/3) |
被相続人の兄弟姉妹にはない |
機関 | ソウル家庭法院 ※韓国内に財産がある場合は、放棄の手続は日本ではできない |
家庭裁判所 ※全相続財産が日本にある場合は、国際裁判管轄権が認められ、放棄の手続は可能 |
その他 | 相続排除の制度はない | 著しい非行のある相続人は相続排除可能 |
- ★在日コリアンの相続放棄における注意点!★
- 日本の民法に定める法定相続人の範囲は、第3順位の兄弟姉妹までですが、韓国民法に定める法定相続人の範囲は、第4順位の「4親等以内の傍系血族」までとなっており、相続財産が負債等の消極財産が大きいために相続放棄をする場合、4親等以内の傍系血族まで相続放棄の問題が及ぶことになります。
-
『このような場合、遺言で「相続は日本法によると指定」しておくことで負債の相続放棄の範囲を兄弟姉妹までに限ることができ、相続手続きを日本法に従って行うことができます。
特に被相続人の国籍・地域欄の表示が「朝鮮」である場合、相続手続きに必要な書類収集において様々な困難を伴うこともありますので、遺言で必要なことを指定しておくと相続手続きをスムーズに進めることが可能です。
相続財産が日本にある場合は国際裁判管轄権が認められ、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で相続放棄などの手続きをすることができます。
但し、相続財産に韓国所在の不動産が含まれる場合は、韓国の裁判所で手続をする必要があります。遺言の方式は、日本法、韓国法、いずれの方式でもすることができます。
在日コリアンの方は、なじみがある日本方式による遺言の方が、その後の相続手続きをスムーズにおこなえる点でおススメです。
在日コリアンの相続に必要な韓国書類は?
例えば、在日コリアンの方が亡くなり、不動産の相続登記手続きが必要となった場合などは、被相続人の「出生から死亡」までの韓国除籍及び証明書が必要です
相続人は被相続人との親族関係を証明できる韓国の証明書等が必要となります
亡くなった方(被相続人)の必要書類の例
- (ア)被相続人又は父又は祖父戸主の除籍謄本(出生時~2007年12月31日)
- ※除籍謄本とは、戸籍制度廃止により除籍となった2007年12月31日までの旧戸籍
- (イ)被相続人の家族関係登録簿事項別証明書5種類(2008年1月1日~死亡時まで)
- 基本証明書・家族関係証明書・婚姻関係証明書・入養関係証明書・親養子入養関係証明書
それぞれのご家庭により家族の状況や韓国書類の有無などにより、相続の際に収集する書類が大きく異なります
相続財産の内容によって手続きをする窓口(不動産:法務局/動産:金融機関等)が異なるため、それぞれの窓口が求める書類を準備しなければなりません
当事務所では、ご相談者様の状況をしっかりヒアリングした上で、必要な書類の収集と翻訳までトータルでサポートしております
当事務所の相続手続サポート内容
相談が多い事案
提出先: | ① 法務局(不動産の名義変更手続き) |
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② 年金事務所(遺族年金請求手続き) | |
③ 金融機関 (口座解約手続き) |
- 1. ご相談(事案の確認)
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- 亡くなった方の国籍を確認します
- 手続き窓口を確認します(窓口:法務局、金融機関、年金事務所など)
- 相続人の国籍や範囲などを確認します
- 手続きに必要な書類を確認します(国籍や相続財産等により収集書類が決まります)
- 手続きの説明や流れについてご説明します
(事案によっては弁護士や司法書士など専門家をご紹介致します) - 当事務所の手続サポートのご案内・費用などをご案内いたします
- 2. 打ち合わせ
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- 事案に必要な手続き内容が定まりましたら、具体的に手続きのための打ち合わせをします
- ご用意していただく資料等をご案内します
- 3. 書類の収集及び翻訳作業
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- 手続き窓口へ必要書類を確認した上、必要書類の収集をしていきます
- 韓国書類 :領事館
- 住民票など :日本の役場
※韓国書類については、本籍地の情報が不正確ですと領事館での収集(取り寄せ)が困難になる場合があります このようなケースでは正確な情報(本籍地)を調査する必要があり、当事務所が直接本国の役場へ問合せや確認をする場合もあります
- 4. 申請書類の作成
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- 取寄せた資料などをもとに、申請書類を作成していきます
手続き困難な事例
- ★韓国書類の交付請求権者がいないケース
- 韓国の法律では「本人」「配偶者」「直系血族(両親や子など)」のみが韓国の証明書等を請求できるとしています 兄弟姉妹などの親族からの請求は認められません
- ★日本と韓国で記録が違う
- 名前が違う、生年月日が違う、両親の記録が違うなど…
氏名や生年月日が違いますと同一人物として認められず、日本で相続手続きを行うことがたいへん困難になります 本人が生存している場合は韓国裁判所へ改名や戸籍訂正等の手続きをすることができますので、お困り時はご相談ください