■韓国の離婚手続き
日本と同じく、協議上の離婚と裁判上の離婚があります。
日本の協議離婚は届出書を提出すれば終了しますが、韓国の協議離婚は裁判所の手続きが必要となる点で日本と異なります。
また、調停制度があり、調停で両者の話し合いがまとまらなければ裁判離婚へと進むことになります。(日本と同じく調停前置主義)
【協議離婚】
韓国の協議離婚が日本の協議離婚と大きく異なる点として、離婚届(申告書)提出前に「家庭法院(裁判所)による離婚意思確認手続」を経なければならないことです。
未成年者の子がいる場合は、親権者指定や子の養育と面接交渉、財産分与等についても協議しなければなりません。
ちなみに、韓国では結婚しても夫婦別姓で妻の姓(氏)は変更しないため、離婚による氏の変更等はありません。
★家庭法院(裁判所)による離婚意思確認手続き★
- 「協議離婚意思確認」を申請
離婚をしようとする夫婦は、まずは当事者の登録基準地(旧本籍地)又は住所地を管轄する家庭法院(裁判所)に夫婦双方が出席し、協議離婚意思確認申請をします。
夫婦が韓国外に居住する場合は、その国における本人の居住地を管轄する在外公館(大使館・領事館)に申請をすることもできます。
夫婦の一方が刑務所に収監されている場合等を除き、この意思確認申請は当事者双方の出席が必要であり、弁護士による代理も認められていません。
協議離婚をしようとする夫婦は、必ず家庭法院(裁判所)から離婚に関する案内を受ける必要があり、ケースによっては裁判所から相談を受けるよう勧められることもあります。
- 熟慮期間
家庭裁判所の「離婚意思確認」は、①の案内を受けた日から下記の期間が経過した後でなければ受けることができません。
1、 未成年の子(胎児含む)がいる場合は3ヶ月
2、 成年到達まで1ヶ月~3ヶ月以内の未成年の子さんがいる場合は成人になった日
3、 成年到達まで1ヶ月以内の未成年の子がいる場合は1ヶ月
4、 子がいない又は子が成人した場合は1ヶ月
家庭内暴力など切迫した事情がある場合は、その理由書を添付して熟慮期間の短縮又は免除を求めることもできます。
- 「離婚意思確認」
家庭裁判所が定めた日時に必ず夫婦双方が出席しなければなりません。
夫婦双方に離婚の意思があることが確認されれば、「離婚意思確認書」が夫婦それぞれに交付されます。これを後日離婚申告書に添付します。
- 「養育費負担調書」の作成
夫婦が協議した未成年の子についての養育費負担に関する内容を確認して「養育費負担調書」を作成します。
養育費負担調書には、確定された審判に準じて執行力が認められ、養育費負担調書に定めた養育費支給義務が履行されない場合は、家事訴訟法上の履行命令もすることができます。
- 「離婚申告書」の提出
家庭裁判所から離婚意思確認書の交付を受けた日から3ヶ月以内に当事者一方又は双方が登録基準地(旧本籍地)又は住所地を管轄する役場に確認書を添付して離婚申告書を提出することにより協議離婚が成立することになります。
未成年の子がいる場合は、離婚届を提出する際に子の養育費に関する協議書等を添付する必要があり、また、親権者指定届出もしなければなりません。
離婚申告書を提出しないまま意思確認書の交付を受けてから3ヶ月が経過した場合、再度家庭裁判所の意思確認手続を経なければならなくなります。
☆①離婚意思確認申請から⑤離婚申告書提出までには数ヶ月時間がかかります。
■「日本人」と「韓国人」の協議離婚手続き
例えば、在日コリアンと結婚した日本人が協議離婚をしようとする場合、日本の手続方法で協議離婚をすることができますので、居住する市区町村役場へ離婚届を提出して、3ヶ月以内に日本の離婚届出受理証明書を添付して、韓国の在外公館(大使館・領事館)へ報告的離婚申告をすれば、両国において有効に協議離婚が成立することになります。
両国への協議離婚手続きに必要な書類については、事前に韓国領事館及び日本の市区町村役場へ確認しておくと、手続きをスムーズに行なえますのでお忘れなく!
■「韓国人」と「韓国人」の協議離婚手続き
日本に暮らす韓国人夫婦が協議離婚をしようとする場合、二人の国籍が韓国でありますので韓国民法が適用になり、家庭裁判所の離婚意思確認手続きをしなければなりません。
しかし、日本にいながら韓国の家庭裁判所の手続きをするのは大変ですので、日本にある韓国領事館で離婚意思確認手続きをすることもできます。この場合も必ず当事者双方の出席が必要であり、代理人の出席は一切認められません。領事館で陳述書や調書が作成され韓国ソウル家庭裁判所へ送付され、書面による離婚意思確認を受けることができます。
熟慮期間としては、2~3ヶ月ほど時間がかかります。
手続の詳細については、事前に居住地を管轄する韓国大使館・領事館へ確認することをお勧めします。