💡豆知識⑥:韓国人夫婦は協議離婚できない?

🌸ちょっと役立ち豆知識💡

 

ℚ 韓国人夫婦はふつうの協議離婚はできないの

 

日本生まれ在日3世のCさん、同じ在日3世の夫との離婚届を役所へ提出しに行きましたが、役所からは韓国人同士の協議離婚手続きは日本の役所ではできないので、領事館に行くようにと言われて困ってしまって相談に来られました。

結婚届は普通に日本の役所で出来たのに、離婚届はどうして日本の役所では受理してもらえないのでしょうか❓

 

💡韓国の協議離婚制度

韓国も日本と同じく、協議離婚と裁判離婚があります。

日本の協議離婚は届出書を提出すれば成立しますが、韓国の協議離婚は裁判所の離婚意思の確認手続きが必要となる点が日本と異なります。

また、調停制度があり、調停で両者の話し合いがまとまらなければ裁判離婚をすることになります。(調停前置主義)

 

韓国の協議離婚が日本の協議離婚と大きく異なる点としては、離婚届を提出する前に「裁判所による離婚意思確認手続」を経なければならないことです。

未成年者の子がいる場合は、親権者指定や子の養育と面接交渉、財産分与等についても事前に協議しなければなりません。

ちなみに、韓国では結婚しても夫婦別姓で妻の姓(氏)は変更しないため、離婚による氏の変更手続きは必要ありません。

 =裁判所による離婚意思確認手続き=

 

  • 1,「協議離婚意思確認」を申請する

離婚をしようとする夫婦は、まずは当事者の登録基準地(本籍地)または住所地を管轄する裁判所へ夫婦そろって出席をして、協議離婚意思確認申請をします。

夫婦が韓国外に居住する場合は、その国における夫婦の居住地を管轄する在外公館(大使館・領事館)に申請をすることもできます。

夫婦の一方が刑務所等に収監されている場合等を除き、この意思確認申請は夫婦双方の出席が必須であり、弁護士による代理も認められていません。 協議離婚をしようとする夫婦は、必ず裁判所から離婚に関する案内を受ける必要があります。

  

  • 2,熟慮期間

家庭裁判所の「離婚意思確認」手続きは、案内を受けた日から次の期間が経過した後でなければ受けることができません。

1、 未成年の子(胎児含む)がいる場合は3ヶ月

2、 成年到達まで1ヶ月~3ヶ月以内の未成年の子さんがいる場合は成人になった日

3、 成年到達まで1ヶ月以内の未成年の子がいる場合は1ヶ月

4、 子がいない又は子が成人した場合は1ヶ月

 家庭内暴力など切迫した事情がある場合は、その理由書を申し出て熟慮期間の短縮または免除を求めることもできます。

  

  • 3,「離婚意思確認」手続き

家庭裁判所が定めた日時に必ず夫婦そろって出席します。

夫婦双方に離婚の意思があることが確認されれば、「離婚意思確認書」が夫婦それぞれに交付されます。

これを後日離婚届(申告書)に添付します。

 

  • 4,「養育費負担調書」の作成

未成年の子がいる場合は、養育費負担に関する「養育費負担調書」を作成します。

養育費負担調書は、確定された審判に準じて執行力が認められ、養育費負担調書に定めた養育費支給義務が履行されない場合は、家事訴訟法上の履行命令もすることができます。

 

  • 5,「離婚届(申告書)」提出

家庭裁判所から離婚意思確認書の交付を受けた日から3ヶ月以内に、夫婦の一方又は双方が登録基準地(本籍地)または住所地を管轄する役場に確認書を添付して離婚申告書を提出すれば協議離婚が成立します。

未成年の子がいる場合は、離婚届に子の養育費に関する協議書等を添付する必要があり、また、親権者指定届出もしなければなりません。

離婚申告書を提出しないまま意思確認書の交付を受けてから3ヶ月を経過した場合は、再度、家庭裁判所の意思確認手続を経なければならなくなります。

ちなみに、協議がまとまらないと、1,離婚意思確認申請⇒5,離婚申告書提出まで数ヶ月時間かかりることもあります。

 

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ℚ 日本に住む韓国人夫婦の協議離婚はどうするの

 

さて、役所で離婚届を受理されなかった在日3世のCさんの協議離婚手続きは韓国の裁判所でやらなければならないでしょうか?

日本に暮らす韓国人夫婦が協議離婚をしようとする場合、二人の国籍が韓国でありますので韓国民法が適用になることから、家庭裁判所の離婚意思確認手続きを経なければなりません。

しかし、日本にいながら韓国の裁判所の手続きをするのは大変ですので、日本にある韓国領事館で離婚意思確認手続きをすることができます。ただ、領事館には必ず夫婦がそろって出席する必要があり、代理人の出席は一切認められません。

領事館において、上記の1,離婚意思確認申請⇒5,婚申告書提出までの手続きをすることになります。

 

 離婚意思確認申請書(見本)

 

 

  陳述要旨書(見本)

 

  離婚申告書(親権者指定書)

 

熟慮期間も当然ありますので、通常2~3ヶ月ほど時間がかかります。

手続の詳細については、お問い合わせください。

 

このように、韓国人同士の協議離婚がむずかしくなった理由としては、韓国民法の改正にあります。

韓国では、平成16年(2004年)9月20日以降、日本方式による協議離婚が認められなくなりました。

韓国へ協議離婚届を提出する際は、必ず在外公館の領事が作成した離婚意思確認書の添付が必要になり、さらに平成20年(2008年)6月22日以降からは離婚する夫婦に未成年の子がいれば「子どもの養育と親権者の決定に関する協議書」も必須となりました。

ただ、平成16年(2004年)9月19日までに日本で成立した協議離婚については、この離婚意思確認手続きは不要です。

平成16年(2004年)9月20日以降に日本の役場で受理された離婚届出については、日本国内においては有効ですが、韓国においては効力を有しないため、韓国で有効な協議離婚を成立させるためには領事館での協議離婚意思確認手続きを経なければなりません。

このように日本では離婚が成立しているが、韓国内では婚姻が継続しているような跛行婚状態は、その後の再婚や相続手続きにおいてさまざまな問題を生じさせる原因となりますので、解消しておくことが重要です。

韓国方式による協議離婚がむずかしければ、日本の家庭裁判所での調停を利用する方法もあります。

実際、夫婦そろって領事館へ出頭することの心理的な負担を感じている方や行方不明で連絡が取れないなど、韓国方式がむずかしいケースは日本の家庭裁判所による調停をご案内しています。

 

ℚ 日本人と韓国人夫婦の協議離婚はどうするの

 

もしも、在日3世Cさんが日本人配偶者と協議離婚をしたい場合は、領事館へ行かなければならないでしょうか❓

 

日本人と韓国人夫婦の離婚については、日本方式でまったく問題ありません。

日本人同士の場合と同様に離婚届を役所へ提出して、3ヶ月以内に韓国の領事館へ離婚申告(報告的届出)をすれば、両国において有効に協議離婚が成立することになります☘

 

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◎checkpoint!!

 

在日韓国人間の日本における協議離婚の届出について

平成1698日民事局民事第一課補佐官事務連絡

 本年317日、日本の方式に従って協議離婚をした在日韓国人夫婦の戸籍上の届出の取扱いを定めた同国の最高裁判所戸籍例規第322号が同例規第668号により廃止され、同例規第668号の施行日である本月20日以降、在日韓国人夫婦が協議離婚をする場合には、日本の方式により協議離婚の届出を我が国の市区町村長に提出し、その受理証明書を韓国の戸籍官署に提出することにより離婚を申告することができた従来の取扱いは認められないこととなり、当事者双方が在日韓国大使館に協議離婚の申告をし、その後同国の家庭法院による離婚意思存否の確認を受けなければ、韓国当局は離婚の成立を認めないとする取扱いとなりました。

 在日韓国人夫婦から日本の方式による適法な協議離婚の届出が我が国の市区町村に提出された場合には、これを法例第22条(=通則法第34条)に基づく行為地法によるものとして受理せざるを得ませんが、当該受理をもっては韓国法上、協議離婚の成立は認められないことから、在日韓国人夫婦の協議離婚につき相談等があった際には、相談者に対し、取扱いの変更の概略を説明し、その詳細については在日韓国大使館等に問い合わせるよう対応することにつき、貴管下支局長及び管内市区町村長に周知方お取り計らい願います。

 

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■~まめ知識~

☆近親婚の禁止☆

韓国では長い間、同姓同本(※)の者同士の婚姻を禁止する規定を設けていましたが、1997年に憲法裁判所による違憲決定により、この規定を削除し、現在は「8親等以内の血族(特別養子の縁組前の血族含)間の婚姻」と「6親等以内の血族の配偶者、配偶者の6親等以内の血族、配偶者の4親等以内の配偶者の姻族又は姻族であった者」との婚姻を禁止する規定があります。

養子については「養父母の6親等以内の血族であった者と養父母の4親等以内の姻族であった者との婚姻」も禁止されています。

  

☆『同姓同本』とは

 

「姓」・・・約280種あり、金・李・朴・崔・鄭で全体の50%以上を占める。

一文字の姓が大部分だが二文字の姓もある(例:南宮・司空など)

 

「本」・・・本貫といい、その氏族の発祥の地をいう。父系血族主義の祖先の発祥地域の名称である。

 

   例:  Aさん:金○○と言います。

           Bさん:金□□と言います。

           Aさん:どちらの金氏になりますか?

           Bさん:「金海」の金です。

           Aさん:私は「安東」の金です。よろしくお願いします。

                       

                       

「同姓同本」とは、もしAさんもBさんと同じく「金海」の金氏である場合、二人は同じ「金」の姓で同じ本貫「金海」なので、氏族の祖先が一緒であると考えられ、長い間近親婚の対象であった。

 

  現在は法律上婚姻は認められているが、年長者のなかには抵抗を感じる人も少なくない。